十勝の鹿追町 聖書と人生のいろいろ

現代人の宇宙信仰? 見えない宗教を考える

2021/10/18
 
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2016年9月に、十勝鹿追町オープンした小さな教会です。,Voluntarily(自発的に),Open(開放的に),Logically(論理的に),聖書を学んでいます。史上類をみない大ベストセラー、聖書について、一緒に学んでみませんか? 執筆者は、牧師:三浦亮平です。

1. イーロン・マスク氏とロケット

EV( 電気自動車)を販売するテスラの株の時価総額が、トヨタを抜いたことが、一時期話題となっていました。

創業者のイーロン・マスク氏は、スペースXという宇宙開発会社も立ち上げ、初の民間による有人ロケットの打ち上げにも成功。まさに時の人です。

経済的に大成功を収めた実業家が、ロケット開発や月旅行に多額の投資をする。そういう記事をよく目にします。

大樹からロケットを飛ばしている堀江氏しかり、莫大な額で、月旅行の権利を買い取った前園氏しかりです。

これからますます期待できるビジネスの分野として、宇宙が注目されているという状況があるわけですが、彼らの熱意には、時に、それ以上のものを感じます。

 

2. 宇宙開発の現実

現実を見れば、アポロの月着陸は、1969年。わたしにとっては、生まれる前の話です。ちょうど、わたしの生まれた1972年が、終了の年です。

おどろくほどに、実に半世紀近くが経過しています。人類の科学で、こんなにも長い期間、進展していない分野も珍しいでしょう。

 

事実として、現在、月面には一台の探査車も稼働していません。

中国が、無人機の月面着陸に成功したという報道がありましたが、以降の音沙汰はありません。

 

なぜ、遙かに遠い火星には探査車があるのに、月面にはないのか。

大気のあるなしが、一番大きな要因です。

民間初の有人ロケットとなったマスク氏のクルードラゴンは、パラシュートで帰還しました。

当初は、垂直に着陸する画期的なロケットの開発に力を入れていたようですが、結局、実現したのは50年前のアポロと同じ方法です。

 

たとえば、スカイダイビングで、パラシュートが開かず地表に落下した。そういう事故を聞くと、遺体はどんな悲惨なことになっているかと想像します。

しかし、実は、飛行機から落下した遺体も、高層ビルから転落した遺体も、損傷の程度は大差ないそうです。

なぜなら、空気抵抗があるからです。落下速度は、一定以上のスピードになりません。

落下の限界速度を終端速度と言いますが、地球上での人間が落下した場合の終端速度は、時速約200キロメートル。それが限界なのです。

 

しかし、大気がなければ、どうなるでしょうか?

落下物は、衝突の瞬間まで速度を増し続けます。

 

日本の観測衛星かぐやは、月の軌道上を時速約5,500kmで周回しています。

マッハ5.2。通常のジェット旅客機の6倍以上の速度です。

飛行機(というか、ほとんどロケットかミサイルのようなものですが…)の世界最高記録が、マッハ6.7。それに迫るとてつもない速度です。

これを月面に落下させれば、重力が加算されて、さらに速度は増すでしょう。

 

地球上では体験し得ないような高速で落下する物体を、地表でピタリと静止させる技術がなければ、月着陸などできないのです。

パラシュートが使えない以上、逆噴射で姿勢制御するしかありません。

超高速で落下する物体を、逆噴射だけで静止させる。しかも、多量な燃料を消費しつつ、宇宙船の質量も変化し続ける中でのことです。

それは、いかに困難なことでしょうか。

 

2019年、スペースX社のロケットで打ち上げられたイスラエルの宇宙船が、初の民間機の月面着陸に挑みました。
“軟着陸の際に、技術的な問題が発生した” とのことですが、月面に激突し、大破したということでしょう。

3. SF(サイエンス・フィクション)は、スペース・ファンタジー?

50年前とは比較にならない極めて高度な演算能力を手にした人類ですが、それでもなお、月への着陸は極めて困難です。

しかし、大気のある火星ならば、パラシュートが使えます。火星に探査機がある理由です。

 

月がダメなら火星へと考えたのか知りませんが、マスク氏は、人類の火星移住を掲げています。

火星に探査機を送る具体的な計画も進めているようです。

現実には、1969~72年に行われたアポロ計画を除いて、人類が地球の重力圏外を離れた記録はありません。

現在、国際宇宙ステーション(ISS)が周回しているのは、高度400km。地球の周回軌道では一番低い、低軌道上です。

宇宙にいるといっても、せいぜい東京から大阪くらいの距離しかないのです。

 

宇宙開発の時代などと言っても、実際に行われているのは、地球の周りを飛び回っているにすぎません。

各社が目指している宇宙旅行とは、言ってみれば、飛行機よりはずっと高いところを飛ぶという、それだけのことです。

月旅行の可能性すら薄く、火星への人類の移住など、ファンタジーでしかありません。

しかし、マスク氏のように、大真面目に口にする人々は絶えません。

 

マスク氏の究極の目的は人類救済なのだそうです。

私が読んだのは、マスク氏のビジョンの大きさを讃える記事でしたが、なるほど、と、納得しました。

つまりこれは、新手の宗教なのだ、ということです。

宇宙という存在自体が、現代社会に生きる人類の信仰の対象なのです。

 

地上を見れば、人間は、古くからの問題を何一つ解決できていません。

民族同士の争いは止まず、感染症に右往左往し、自然災害におびえています。

目の前の地球の現実から目を反らし、理想世界の実現を宇宙に託す。

宇宙こそ、現代人にとっての千年王国、ユートピアなのだと言えるでしょう。

 

4. 見えない宗教と向き合う

ナチスの千年王国、大日本帝国の大東亜共栄圏、共産国家のユートピア。人間が自分の力で理想世界を作ろうとしたその結果はどれも、惨劇に終わっています。

かつての十字軍の悲劇も、自分たちの力で聖地を奪還することにより、ユートピアの実現を目指したものだったと言えるでしょう。

当初の理想は、現実の前にねじ曲がっていきました。当然の結果だと思います。

 

マスク氏は、脳に埋め込むチップの開発も進めています。先日も、豚を使った実験のデモの様子が公開されていました。

現代における宇宙信仰が一体どこに向かうのか。気になるところです。

 

聖書には、偶像礼拝に陥った異邦人やイスラエルの姿が何度も記されています。

何かを信じないではいられないのが、人間なのだと痛感されます。

 

純粋に客観的で、科学的で、論理的であることなど、人間にはできません。

どこまでも不条理で、自分には解決できない罪の問題を抱えたまま、右往左往している。

神様から見た人間の現実は、昔も今も、何一つ変わらないままなのでしょう。

 

聖書はとうの昔に、人間の限界を明らかにしています。

人間は人間の力で、この世に理想世界を造り出すことはできない。絶望の中、示されたのが、メシアによる救いの道筋でした。

私たちの立つべきは、今もこれからもただ一つ。変わらない神の約束です。

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