2章 大洪水とノアの箱舟
2章 大洪水とノアの箱舟
1.定められた裁き
人は大地に増え広がった。堕天使たちは、人間の娘たちを妻とした。生まれたのは、もはや人ではない、堕落しきった者たちだった。
サタンは、「女の子孫」であるメシアの誕生を阻むため、人間そのものを破壊しようと企てたのだ。
神は言われた。
「わたしの霊は、人のうちに永久にとどまることはない」 神は、120年後に裁きを下すと決められた。地上から、人も動物も消し去ってしまうと。
2.義人ノア
ただ一人、神の心にかなったのが、信仰者セツの系譜を紡ぐノアだった。神はノアに、人間の悪のゆえに、地上を大洪水で滅ぼし去ると告げられた。
同時に、神は救いの道を示された。巨大な箱船の建設を命じ、詳細な設計までノアに教えられたのだ。そして、家族と共に、すべての生き物を雄雌一つがいずつ箱船に乗せることを命じられた。
ノアは、神に言われた通りに行った。人々にも、神の警告を告げたが、耳を傾ける者はいなかった。
3.大洪水
時が来た。箱舟に乗り込むようにと、神はノアに命じられた。すべての動物たちが一つがいずつ、集まってきた。最後にノアと家族の8人が箱舟に乗り込むと、外から箱舟の戸は閉められた。
神の手が、これらすべてのことを導いていた。
地下から大量の水が噴き出し、上空の分厚い水蒸気の層は、膨大な雨となり、40日40夜降り続いた。世界中が大水の底に沈んだ。
陸地は裂け、丘が海に沈み、海が盛り上がって山脈となった。あらゆる生き物は、激しい濁流に瞬く間に呑み込まれた。誰一人、免れた者はなかった。地上にいた堕天使たちも、その子たちも。人が築いた文明の痕跡すらも消し去られた。
大海原を漂う一艘の箱舟だけが、命ある者の住まう場所だった。神はノアと動物たちを覚えておられた。
150日目に、水は減り始めた。山々の頂が現れはじめ、箱舟はアララテ山にとどまった。ノアは、箱舟の窓から一羽の鳩を放した。やがて鳩は、オリーブの葉を加えて戻ってきた。世界に再び、植物が茂りつつあると分かった。
乾いた地に、ノアと家族たちが立ったのは、およそ1年後のことだった。ノアは、祭壇を築き、家畜を屠り、犠牲として献げた。
神は言われた。「わたしは、決して再び人のゆえに、大地にのろいをもたらしはしない。人の心が思い図ることは、幼いときから悪であるからだ。」
神は、世界を大洪水で滅ぼすことは二度としないと約束された。そして、産めよ、増えよ、地に満ちよ、と命じられた。
変わり果てた厳しい世界で、神は始めて、肉を食べることをゆるされた。ただし、血のあるまま、生きたまま食べるな、と厳しく命じられた。
人を殺す者は、死刑になるとも告げられた。神は、神が与えられる命の大切さを、ノアと家族、その後に生まれてくるすべての人間たちに教えられたのだ。
神は、これらの約束のしるしとして、空にはじめて虹をかけられた。
まとめ 神が阻まれたサタンの企て
サタンは、メシアの誕生を阻むため、悪霊たちと人間を交わらせ、人間という種自体を滅ぼそうと企てた。
聖書に登場する天使たちには体があり、人と食事を食べる場面もある。堕天使である悪霊も体を持っていて、人と交わることができたのだろう。その堕天使たちの肉体も、人間との間に産まれた者たちも、大洪水ですべて滅ぼされてしまった。
悪に染まった世界を神は嘆き、大洪水で滅された。箱舟を造り、乗り込んだ、信仰者ノアと家族8人だけが、神を信頼して救われた。
神は、二度と大洪水で世界を滅ぼすことはないと約束された。罪ある人間を、なお生かし続けると示されたのだ。そのしるしとして、空に虹がかけられた。
「産めよ、増えよ、地に満ちよ」
神に命じられ、ノアの3人の息子たちから、人間は再び世界に広がっていった。