⑮ヨセフとマリア 「メシア誕生」 中間時代から最初のクリスマスへ
1. 中間時代 (旧約と新約の間の空白の時代)
バビロン捕囚から70年後、解放されたイスラエルの民は帰還を始め、荒れ果てたエルサレムに神殿を再建します。しかし、そこに神の栄光はありませんでした。
祭司エズラは律法を深く学び、宗教改革を行います。神の律法を破り、偶像礼拝に陥ったことがエルサレム陥落とバビロン捕囚の元凶でした。
イスラエルの民は悔い改め、二度と律法を破らないと誓ったのです。
その後、律法学者たちが、律法の周りに予防線を張り巡らして行きました。
それが、口伝律法、「昔の人(長老たち)の言い伝え」と呼ばれるものです。
例えば、働いてはならないという安息日の律法を拡大解釈して、何歩以上歩くな、治療もするな、という具合です。
さらに、律法の教師たちは、口伝律法に、神の律法と同等の権威があるとまで言い出しました。こうして誕生したのが、パリサイ派。後にイエスと対立する人々です。
それが、旧約聖書と新約聖書との数百年の空白に起こったことです。
この間、イスラエルは、ペルシャ、シリア、ローマと、強大な帝国に支配され、苦難を味わい続けます。
イドマヤ人(エドム人)のヘロデ大王が、ローマの傀儡政権としてイスラエルに圧政を行うに至って、人々のメシア待望の思いはピークに達していました。
2. メシアの誕生
そして、ついに誕生されたメシア(キリスト)が、ナザレのイエスでした。
数々の預言通り、メシアは、ユダ族のダビデ王の子孫から、ベツレヘムで、一人の処女から生まれたのです。
メシアは、その身に神の栄光を宿していました。(ヨハ1:14)
マタイ1章のメシアの系図は、子がいなかったエコニヤで途切れています。 そこを補っているのがルカ3章のマリアの系図。法的な父親であるヨセフと、肉体的な系譜を受け継ぐ処女マリアとの間に、メシアは誕生しました。
メシアが、父から受け継がれる原罪を持たず、ユダ、ダビデの子孫として誕生するには、それが唯一の道でした。
3. メシアの使命
羊飼いたちに現れ、メシアの誕生を告げた御使いは、「布にくるまって飼い葉桶に寝ている乳飲み子(ルカ2:9)」を探すよう命じました。それは極めて珍しい姿でした。
この地方では、天然の洞窟を家畜や墓地として利用していました。村はずれに隣りあって家畜小屋と墓地があることは珍しくなかったのです。
墓地の入り口には、死者を包むための布が置かれていました。
ヨセフとマリアは、何もない家畜小屋で生まれたイエスを、墓地にあった布で包んで、飼い葉桶に寝かせたのでしょう。木材の希少なこの地で、飼い葉桶は、石を削って作られていました。
石でできた飼い葉桶に、死者を包む布でくるまった乳飲み子。それは死を予感させる姿に他なりません。
メシアが、私たちの罪のために十字架で死ぬことが、暗示されています。
4. 神の栄光と私たち
世界の最初、人と共にあった神の栄光は、人の罪により去りました。
神の栄光は、神が選んだイスラエルを通して、幕屋、神殿に宿りましたが、民の背きによって、神殿を去りました。
数百年の空白の後、神の栄光が再び地上に現れた。それが、救い主、キリスト・イエスです。
主イエスは、十字架の贖いと復活を成し遂げられ、今や、主イエスを信じる全ての者の内に、聖霊により、神の栄光が宿っているのです。