⑭エレミヤ 涙の預言者 新しい契約 エルサレム陥落とバビロン捕囚
1. 王国の分裂と滅亡 1~5章
ダビデの後、若くして王となったソロモンは、神に知恵を求め、神は、加えて富みと名声をも与えました。
ソロモンの最大の功績は、エルサレム神殿の建設です。民の総力を挙げて建て上げた神殿の至聖所に、神の栄光・シャカイナグローリーが宿りました。
繁栄を極めたイスラエルでしたが、周辺諸国と政略結婚を重ねたために多くの偶像が持ち込まれ、ソロモン自身も神から離れてしまいます。
ソロモンの死後、王国は北のイスラエルと南のユダに分裂。イスラエル初代の王ヤロブアムは、独自に神殿を築き、金の子牛を設置しました。
北は、一人の善王も現れることなく、堕落を重ね、200年後にはアッシリアに滅ぼされます。
都エルサレムを擁する南のユダは、堕落と悔い改めを繰り返しますが、最後には、バビロニアに滅ぼされました。これがBC586年のバビロン捕囚です。
エルサレムのおもだった人々は、バビロンに連行され、70年を虜囚として過ごすこととなります。
2. 南北時代の預言者たち
南北時代は、最も多くの預言者が活躍した時代でした。
預言者とは、神のことばを預かり、民に伝える者です。彼らは、律法に立ち返り、主に従うよう民に訴えました。
“契約を守れば神の守りがあり、破れば約束の地を追われる。(申命記28章)”
民の背信ゆえに、モーセの律法の呪いの側面が実現されていった時代でした。
イスラエルの預言者エリヤは、バアル礼拝者たちとの孤独な戦いの中で、残された信仰者を見いだし、預言者学校を作り上げていきました。
「イスラエルの残れる者(レムナント)」と呼ばれる少数の信仰者たちの存在ゆえに、神の民は、かろうじて保たれていったのです。
この時代、数々の奇跡も起きました。危機にあっての神の直接的な介入でした。
3. 涙の預言者エレミヤ
南ユダの末期に活躍したエレミヤは、エルサレム陥落とバビロン捕囚を目撃します。
彼は、偶像礼拝の罪を糾弾し、捕囚を預言すると共に、70年後の解放と国の再建をも伝えましたが、警告は、ことごとく民に拒まれてしまいます。
涙の預言者と呼ばれるエレミヤは、苦難のメシアの姿に重なります。
イエスもまた、民から拒否され、裏切り者扱いされ、偽教師から攻撃されました。ローマの脅威の時代に、イエスは、エルサレムの崩壊を預言されたのです。
4. 新しい契約
崩壊が迫り、偽預言者との戦いが激化する中で、エレミヤに与えられたのが、「新しい契約」でした。
石に刻まれた十戒を中心としたモーセ契約・律法を、民は守れませんでした。
新しい契約は、聖霊によって、信じる者の心に記されます。この契約の最大の恵みは、契約を実行する力を、神ご自身が直接に与えられるということです。
ペンテコステの聖霊降臨以降、信じるすべての者に、聖霊が住まわれ、信仰の成長をもたらしてくださっているのです。
新しい契約は、イスラエルの霊的再生と、終末における民族的救いをも約束しています。
アブラハムへの約束は、今も生きています。
神の約束の確かさが、救いの確信の礎です。エレミヤもまた、神の約束に支えられたのです。
『新しい契約』 エレミヤ31:33~34
彼らの時代の後に、わたしがイスラエルの家と結ぶ契約はこうだ。──【主】の御告げ──わたしはわたしの律法を彼らの中に置き、彼らの心にこれを書きしるす。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。
そのようにして、人々はもはや、『【主】を知れ』と言って、おのおの互いに教えない。それは、彼らがみな、身分の低い者から高い者まで、わたしを知るからだ。──【主】の御告げ──わたしは彼らの咎を赦し、彼らの罪を二度と思い出さないからだ。」