Q:ユダヤ人は世界征服を企んでる? ~いわゆる陰謀論のホントのところ~
目次
Q:ユダヤ人が世界を牛耳って、世界政府を打ち立てようとしていると聞きました。
もうすでに、ユダヤ金融が世界をコントロールしているなんて話もありますよね。なんだか恐ろしくて…。
1. 「陰謀論」という陰謀をご存じですか?
世界を陰で支配するユダヤ人の秘密結社?! その陰謀を暴き立てた、出版物やサイトは山ほどありますね。
しかし、著者が変死したとか、出版社が焼かれた、なんて話は聞いたことがありません。
…世界の支配者は、なぜ、それを放置しているのでしょう?
考えられる可能性は二つ。
①それも含めて、秘密結社が世界のすべてをコントロールしている。
②そもそも、そんなものはない。
「ユダヤ人が二人集まると政党が三つできる」 そんなユダヤジョークがあります。
例えば、イスラエルの国会議員は、完全比例代表制で選出されますが、一度も一党が過半数を占めたことがありません。
第一党の最初の仕事は、連立政権の相手探し。
超保守派から超革新派、アラブ政党と、いろんな主義主張を束ねていく政権運営は、とっても大変そうです。
現実を見れば、“全ユダヤ人が一致して世界征服を企んでいる!!“ なんて、それ自体がジョーク以外の何者でもありません。
2. 近代の「陰謀論」の元ネタは?
ユダヤ人陰謀論のトンデモ話には、元ネタがあります。
有名なのが「シオン議定書(プロトコル)」。ユダヤの秘密結社の会議録という体裁で書かれたものです。
極秘の会議録が簡単に流出して世界中に出回っている時点で、秘密結社失格ですが…。
これは典型的な偽書です。
「シオン議定書」は、ロシアの秘密警察が創作したものと言われています。
ロシアは、ポグロムと呼ばれるユダヤ人虐殺が引き起こされたり、歴史的に反ユダヤ主義の強い地域の一つです。
内外に脅威を作り上げて、人民の不満を逸らす。
古今東西、施政者がとる常套手段ですが、ユダヤ人は、しばしば、その対象とされてきました。
ナチスが、ユダヤ人憎悪を煽って支配権を強めたのと同様のことが、ロシアでも行われていたのです。
「シオン議定書」の中身は、というと、妄想たくましく書かれたフィクションです。
噴飯ものの内容は、理性的な検証に耐えうるものではありません。
まともに取り扱う識者などいないのですが、そこが盲点で、かえって野放しになっているわけです。
3. 聖書的に考えると…!!!
「シオン議定書」だけが問題ではありません。
“世界征服を企てるユダヤの秘密結社”という話は、中世にはすでに、ヨーロッパに流布していました。
ユダヤ人は、子どもを誘拐し、悪魔的な儀式の生け贄にしている、などという話がまことしやかに語られたりしていたのです。
さらに遡れば、キリスト教会が、ユダヤ的要素を排除したところにたどり着きます。
イエスは、ユダヤ人のメシアとして来られ、弟子たちもまた、ユダヤ人でした。最初の教会は、全員ユダヤ人です。
しかし、教会の多数派が異邦人になると、ユダヤ人信者は次第に周辺に追いやられていきました。
やがて、教会指導者たちによって、「イスラエルは、教会にとって代わられたのだ」と主張がなされるようになります。
こうして、イスラエルは、教会と置き換えられた、という置換神学(ちかんしんがく)が、主流になっていったのです。
ユダヤ人は、「キリスト殺し」と呼ばれ、激しい憎悪と差別の対象となりました。
これがヨーロッパにおけるユダヤ人差別の根源だと言えます。
使徒の時代に、すでにその兆候はありました。
「ユダヤ人は見捨てられたのか」、という問いに、使徒パウロは、「断じてそうではない(ローマ11:1)」と強く訴えています。
なぜなら、神がアブラハムを通してイスラエルと結ばれた契約は、永遠の契約であり、今も有効だからです。
民族的にメシアを拒んだイスラエルが、世の終わりに、悔い改めて、主イエスを呼び求める時が来ると、聖書は様々な預言に繰り返し記しています。
11:25 兄弟たち。あなたがたが自分を知恵のある者と考えないようにするために、この奥義を知らずにいてほしくはありません。イスラエル人の一部が頑なになったのは異邦人の満ちる時が来るまでであり、
11:26 こうして、イスラエルはみな救われるのです。「救い出す者がシオンから現れ、ヤコブから不敬虔を除き去る。
11:27 これこそ、彼らと結ぶわたしの契約、すなわち、わたしが彼らの罪を取り除く時である」と書いてあるとおりです。ローマ書11:25~27【新改訳2017】