レビュー:「ハマスの息子」 モサブ・ハッサン・ユーセフ著 幻冬舎

   

1.モサブという人

パレスチナ自治区の西岸地域で、ハマス指導者を父に、生まれ育ったモサブ。貧しくも穏やかだったモサブの少年時代が一転するのが、第一次インティファーダです。

激化する抗争。イスラエル軍に対する恐怖。父の度重なる逮捕。冷淡な親族と隣人たち。困窮した母子生活…。少年の視点から、日常が赤裸々に描かれていきます。

そして、青年期。銃の違法な購入をきっかけに、テロ犯容疑として逮捕されたモサブは、イスラエルの諜報機関シン・ヘッドからの勧誘を受けます。

拷問から逃れたいばかりに承諾したモサブですが、スパイの立場を逆に利用して、イスラエルに復讐することしか考えていませんでした。

しかし、刑務所内でモサブが目の当たりにしたのは、パレスチナ人の同胞を監視し、無実の罪を着せて拷問する、ハマス指導者の姿でした。

2.モサブとイエスとの出会い

子どもたちを煽って軍隊に突進させ、若者たちを自爆テロに仕立て上げて送り込みながら、高みの見物を決め込んでいる父の姿。

モサブは、テロを未然に防ぐことを使命として、様々な葛藤を抱えながらもスパイ活動に力を注いでいきました。

モサブのスパイ活動を描いた後半は、様々な人物が入り乱れ、周囲は常に激動し、暴風が吹き荒れているようです。

そのさなかにあって、オアシスのように感じられたのが、モサブとイエス・キリストとの出会いの場面でした。

このためにこそ、この本は書かれたのではないかとすら、私は感じました。以下、その場面からの引用です。

「『隣り人を愛し、敵を憎め』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。しかし、わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、迫害する者のために祈れ。こうして、天にいますあなたがたの父の子となるためである(マタイ5:43~45)」

これだ! この言葉に私は雷に打たれたようになった。こんなことはかつて一度も耳にしたことがない。でも、これこそが今までの人生でずっと私が求め続けていた言葉だった。…敵は国籍や、宗教、肌の色で決まるのではない。私たちすべての人に共通する敵が存在するのだ。強欲、傲慢、そして悪意と悪魔の支配する心の闇である。

 

3.モサブの人生からイスラエルとパレスチナの平和を考える

モサブは、こう結んでいます。

 「真実と寛容こそ、中東問題の唯一の解決方法である。イスラエル人とパレスチナ人の間における課題は、その解決策を“見つける”ということではない。それを“受け入れる”ことができる最初の勇者となることである。」

イスラエルとパレスチナをめぐる歴史と問題について読み進めるほどに、暗澹とした思いにさせられます。

しかし、その中に一筋の光が、福音があります。
メシアニック・ジューとアラブ人クリスチャンの間に、和解と絆が、生まれつつあるのです。徹底して聖書に向き合うという誠実な学びの場が、その土壌になっています。

聖書には、来たるべき、神の支配される世界において、この地に完全な平和がもたらされ、ユダヤ人もアラブ人も共に暮らすことを預言しています。

神の約束を信じる者には、これは、揺るぎない希望です。

その日には、イスラエルは、エジプトとアッシリアと共に、世界を祝福する第三のものとなるであろう。万軍の主は彼らを祝福して言われる。

「祝福されよ わが民エジプト わが手の業なるアッシリア わが嗣業なるイスラエル」と。

イザヤ書19:24~25

 

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