アメイジング・グレイスをめぐる疑問に答える ジョン・ニュートンは奴隷貿易を悔い改めた? 

      2018/04/21

1. アメイジング・グレイスを厭(いと)う人々

以前、とある集会で娘がアメイジング・グレイスを歌った後、一人の牧師に、なぜあんな歌を歌うのかと言われました。

いわゆるリベラルの社会派の牧師でしたけど、その牧師いわく、ジョン・ニュートンは悔い改めてなんかいない、と。

その時は十分話を聞く間もなく、理由も分からないままだったのですが、そういう立場の方は他にもおられるようです。

ニュートンは回心後も奴隷船の船長をしていたではないかとか、イギリスは奴隷貿易廃止後、もっと過酷な植民地主義を行ったという主張があります。

はたしてどうなのか、ニュートンの人生を振り返りつつ、考えたいと思います。

2. 神の存在は認めたけれど…

放蕩の限りを尽くしていたニュートンは、船乗りだった22歳の時、激しい嵐に遭い、死の間際の絶望のただ中で、少年時代以来の祈りを神に捧げ、奇跡的に生還しました。

ニュートンの回心体験として、よく語られる出来事です。

しかしこの後も、彼の生活は大して変わらず、さらには奴隷船の船長まで務めていたことを、彼自身が告白しています。

神の存在を認めることと、本当に神に信頼するのは別なことです。

この時、ニュートンは、神の存在を認めたけれど、本当の回心には至っていなかったのだと思います。

3. 奴隷船を降り、牧師となって…

30歳の時、出港間際に脳出血で倒れたニュートンは、以後、二度と船に乗りませんでした。

もう奴隷船に乗らなくて良いのだと、正直ほっとしたと彼は自伝に記しています。

その後、彼は聖書を本格的に学び始め、38歳で牧師となったのでした。

最初の赴任地は、教育も満足に受けられていない、貧しい人々の多い地区でした。

この頃、人々に少しでも分かりやすく福音を伝えようと作詞した賛美歌の一つが、アメイジング・グレイスだったと言われます。

4. 奴隷貿易の証言をした晩年

ニュートンが奴隷廃止運動に関わり始めたのは50代からで、英国議会で証言をしたのは63歳の時でした。

それまで何をしていたのかと言う人がいます。今の私たちの感覚からすれば、もっともなことだと思います。

当時、奴隷貿易は富裕層の特権であり、当然のこととされていました。既得権を持つ貴族階級と密着した国家教会もしかりです。

奴隷貿易における非人道性に最初に意義を唱えたのは、神との個人的関係を築き、聖書に向き合っていた、福音主義に立つクリスチャンたちでした。

社会全体で当然とされていたことに異議を唱えることができた、その背景には、聖書に基づく真の信仰があったのです。

一方、人の成長には、時間がかかります。信仰の成長でも同様です。

自分自身の犯していた、ある罪に気づくまでに、信仰告白をしてから、何年も、あるいは何十年もかかったなんて体験を、多くのクリスチャンはしていると思います。

大切なのは、気づいたときに、悔い改めて立ち返ることです。

ニュートンは、かつての自分の無自覚さも含めて、奴隷貿易の現実を赤裸々に証言しています。

彼が召天した1807年に、英国の奴隷貿易は廃止されたのでした。彼の証言も大きな役割を果たしました。

5.悔い改めの歌

アメイジング・グレイスは、悔い改めた者が、神を讃えた歌です。

「わたしのようなどうしようもない罪人を、主は一方的にあわれみ、救ってくださった。」
それが、「アメイジング・グレイス、おどろくべき恵み」なのです。

ただ一つ言えるのは、本当に悔い改めていなければ、こんな歌は書けないと言うことです。

ニュートンが、作詞した時点で、奴隷貿易の罪を、どれほど認識していたかは分かりません。
しかし、たとえ、全く分かっていなかったとしても、彼自身の神に対する悔い改めを否定する理由にはなりません。

私たちの信仰は、死ぬまで未完成です。生きている人に、完全な罪の悔い改めなどできません。

ニュートンは、死ぬまで、主を慕い求め、何度も悔い改め、変わり続けたのだと、わたしは確信します。

アメイジング・グレイスは、黒人霊歌と紹介されることがあります。黒人たちによっても愛され、歌われてきたからでしょう。

普遍的な悔い改めの体験が記された歌だからこそ、時代や人種も越えて、多くの人々に愛される歌となっているのです。

6. 欧州で失われて行った信仰

キリスト教信仰が、欧州で大きな影響を及ぼし得たのは、この時代まででした。

1859年に出版された、ダーウィンの「種の起源」に象徴されるように、科学万能主義や、人間の理性中心のヒューマニズムが吹き荒れ、聖書の権威は失墜、キリスト教信仰に基づく倫理観も失われて行きました。

進化論を土台とした優生思想は、人種差別をむき出しにし、産業革命で強大な軍事力を得た西欧列強は、苛烈な植民地政策を推し進めて行きました。

しかし、信仰の基盤が破壊され、かつての影響力を失ったヨーロッパのキリスト教会には、倫理的歯止めをかける力は、もはや、ありませんでした。

その結末が、二度にわたる世界大戦であったのだと、わたしは考えています。

 

Amazing grace how sweet the sound

おどろくばかりの恵み 何と美しい響きだろう

That saved a wretch like me.

私のような者も 救ってくださる

I once was lost but now am found,

道を踏み外し さまよっていた私を 神は救い上げた

Was blind but now I see.

今までは 見えなかったけれど 今は 神の恵みがはっきりわかる

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